下駄と時計。

 

いよいよ、夏の到来。すっかり私の服装も、半袖、上着一枚、そしてジィンズもうす目の軽いものに変化し、革靴にかわって、長楽園のゲタで三茶の街を闊歩しています。カラン、コロン、カラン、コロンのゲタの音も鮮やかです。先日まで白靴下の上からゲタをつっかけていましたが、今は素足のままで闊歩しています。

先日、ワラジをつっかけてみました。あまりにいい感触なので、笑いがこみあげてきます。うれしい感動でした。

二日前、下北沢の帰りに、高ゲタを見つけて感動し、注文しました。この手のものは、注文を受けてからつくるのだそうです。つまり高ゲタなどは、陳列しても売れないのだそうです。出来上がりは金曜の午後とのこと。高ゲタの高さは約8センチと決まっているそうです。私がはくと、約179センチの身長になります。ジィンズにもよく似合います。ワラジもゲタも高ゲタも、下品にはかないように、ワラジはワラジなりの、ゲタはゲタなりのよさを生かせるように、気くばりしてみます。

ごく最近、栄通りの奥まったところに、古着屋が開店しました。この店のオーナーと、すっかり親しくなりました。上智大学の哲学科を卒業した、まだ30代前半の青年、今風に言えば、必ずしも学んだ学部と職業と人生は比例するものではないようです。ただ、考え方に一つの哲学があるようです。それは、美学とでもいったらいいし、経営に必要なセンスとして生きているようです。彼にはちょくちょく操体観をとおしてのセンスや、もち味を教えました。

彼は、人の語るところをよく聞く素直さがあるし、謙虚なんです。

当初、店のハンガースペースには最大限すきまもなく、服をつるしていたのです。服と服とのスペースが全くなくて、呼吸ができないほどでした。私はそれを見逃さづ、服が呼吸できなくて、窒息しているよ、それじゃお客様は買わないな、服だって人間と同じに、呼吸しているんだからね、とアドバイスする。服と服の間をはかり、服が呼吸しているように感じさせると、一つ一つの服が生きてくるんだ、服に呼吸させてあげないとネ・・・。

数日後、オーナーに会うと「三浦さん、言われた通りにしてみたら、手に取って買って下さるお客が増えた、客足が伸びた」と語る。

実は、初めてこの店に足を運んだ時、私に古風な文字盤の時計を見せてくれた。この時計、どうやっても秒針が動かないんですよ。自動なんですけどネ。

どれ見せて。手に取って文字盤に触れる。

・・・秒針が動き出す。オーナ-、手に取って見てごらん、動いているよ。本人びっくり、どうなさったんですか、と不思議そうである。

その後も三浦さん、時計動いてますかと聞く。二ヶ月たっても狂うことなく動いている。この時計、実は私の手元に納まっている。

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