新年のことば2007

毎年11月に入ると、「新年のことば」の執筆依頼が舞い込む。その見慣れた封筒に触れると、今年ももうこんな時節なのだ、と
気づかされるのだ。私は昭和23年生まれ、世に言われる団塊の世代である。昭和22年、23年、24年。この世代のサラリーマンは
随時退職を迎え、その数は800万人とも言われる。

私は18歳でこの道に入り、他の職種を経験したことのない人間である。生涯現役を目指し、励んでいる。第2の人生も、老後の
人生も、考えに及ばない。私の師は85歳まで医師としての現役を通し、90歳まで臨床の場を見守り続けてこられた。私は、
その生きる姿勢を見よう見まねに、今学び続けている。

師が生前言われた言葉を思い出す。
「わしの人生はサーカスの綱渡り、とにかく落ちなきゃいいんだよ」」

この年齢を迎えると、つくづく「まにあっていればいいんだ」という生き方がいかに大切かということが身につまされる。
この10年を振り返ってみると、かなりのスピードでやりたいことをやれるときにやってきた、という想いがある。
その結果、肉体的な負の部分も背負い、自己の責任において去年はそれを刈り取ってきた。それによって、これからの
命を十分にいただけることになった。感謝である。

(医道の日本 2007年1月号)

2010年8月、奈良にて北村翰男先生と