2010年「新年のことば」医道の日本誌2010年新年号より

人体構造運動力学研究所 所長 三浦寛

「臨床飛ばし」

日本時間10月18日日曜日午前7時
英国時間10月17日土曜日午後11時

  私はこの日から二週間、日本に居ながら、はるか英国に住む二人の患者を診ることとなった。彼と彼女が眠りにつく時間を見計らって日本から治療をおこなう。一人の彼は交通事故で、とある病院に入院中、一人の彼女は英国のとある街で生活している。私が知りうる二人の情報はこれだけである。私には二人から依頼があったということだけで十分である。私はこの二人に意識を通すことで、からだのどこを診なければならぬのかが認識できる。患者を目の前にして視診・触診・動診しなければ臨床ができないということがなくなってしまった。改めてわかったことは、なぜ視診・触診・動診をとおすのか、それはそうして診なければわからないということである。  

 しかし、わかってしまえばその様な診断をとおす必要も無いということもわかった。意識は、意識することによって時間や空間、その距離を一瞬に超え、現象を写し出してしまうこともわかった。我々は時間との制約の中で生活しているが、実は本当は時間や空間(距離)が無い次元に生かされていることに気づくのである。臨床中、私の意識が届いているのかどうか、からだの反応や変化が起きているのかどうかは私自身に写し出される、ある現象によって認識できる。二人の経過はすこぶる順調で、回復にむかっている。このような臨床がなぜ可能なのか、その問いかけがわかってしまえば誰にでも可能なことである。又その問いかけは、実にシンプルなことで、何一つ難解なことではない。この内容については出版の機会を得て公表したいと思う。