操体法・これからの展望と問題点
操体法・これからの展望と問題点
自然法則の応用貢献
私の操体との出会いは、橋本敬三先生との出会いに始まった。その強運に感謝し続け38年間の月日が流れました。
私が知る(38年間の)橋本先生の操体への取り組み、というべきものは、ひとえに、自然法則の応用貢献にあった、
と思うのです。先生は、この自然法則の応用貢献を、いかにして成してゆくべきかを、日夜考え続けていたようです。
当時は「操体」の名称すらなかった時代でしたが、先生にお聞しても「名称など、どうでもよい。真理こそが大切なんだ」と、
全く意に介す様子もなく、ひたすら、臨床としての可能性を追い求めておられたのです。
その自然法則の応用貢献の一つが、般若身経であったと思います。昭和32年この般若身経は「平均集約運動法」として紹介
されております。
この身経の中で、先生が生涯、問いかけてこられたことは、自然体(健康体)としての、人間のあるべき姿でした。その自
然体としての、あるべき姿を、身体運動の法則として体系づけてこられた訳なのです。38年前、「これが、からだの使い方、
動かし方の自然法則だ」と言われ、手渡しして下さったのが、この般若身経だったのです。
現在、この般若身経が健康体操としての広まりをみせているようですが、それ以前に、自然体として、あるべき人間の姿を
テーマに、からだの使い方、動かし方の自然法則における応用貢献を、これから、いかに成し、普及、指導していくべきか
を改めて考えてみる必要性があるのではないかと思うのです。
次に、操体の臨床における自然法則の応用貢献を、いかに成すべきかと言うことでありますが、生前、橋本先生が発言さ
れた記録をたどってみますと、ある時期を境に、従来、「楽な方へ」「痛くない方」へという、楽感、楽な動きをとおす、
動診、操法の問いかけが全く影をひそめ、快適感覚に問いかける動診、操法の考え方、とらえ方へと大きく変わってきたこ
とに気づくのです。
昭和58年、当時橋本先生が85歳の時に、「快適感覚をどう理解するか」という課題に対しての先生の次のような発言
があり、その発言の記録が残されているのです。どのような発言が残されていたのかと言いますと、
- 楽と快は違う
- 操体で言う、きもちのよさ、とは常に、さらに快方を積極的に追い求める
- 頭で考えるのではなく、からだでききわけること。
- 動き、より感覚を重視せよ
- 患者には、きもちよさを指導しなさい
- きもちのよさをききわければいいんだ。きもちのよさで治る
- 動診、操法における呼吸は無意識(自然呼吸)でよい。息を吐きながら、という意識が働くと、感覚がにぶる
連動について
- 無意識の動きには決定したパターンはない。しかし、からだの動きには一定のパターンがある。
以上、先生が発言された記録の内容を記載しましたが、これらの内容を踏まえ、 快適感覚に問いかけた、動
診、操法の応用貢献を、これからより一層体系づけていかねばならないと思うのです。
最後に、橋本先生が残された言葉として、操体の原理は開闢以来、未だ科学化されていない。体系づけてはきたが確立さ
れたものではない、追求と探求あるのみ・・・。
(2004年10月16日開催 第21回 全国操体バランス運動研究会 ナイトセミナー向け要旨集より)